うつ状態になってしんどかったこと①
最近はぼちぼち生きている。
良い方向へ向いたかと思うと、突然すっころぶような毎日である。
うつ状態(と診断される前も含め)になってから、いろいろしんどいことはあったが、個人的に一番しんどかったのは「何がしたい?」と尋ねられることだ。
中でも「何が食べたい?」という質問が一番、私を困惑させた。
以前なら、昼頃になると「今日はカレーが良いなあ」と考えたり、テレビでオムライスの名店を特集していたら「今夜は絶対オムライスを食べたい!」という欲というか信念というか、そんなものがあった。
それは別に絶対叶えられなくてもよかったし、じゃあ明日はカレーにしようくらいのものだった。
そんな気持ちがある日突然、すっかり抜け落ちたのだ。
例えば家族とショッピングモールのレストラン街へ行き「どの店が良い?」と聞かれる。それは私の意思を通そうとしてくれる親切心、思いやりだ。
店の種類は豊富で、和食・中華・洋食・イタリアン…などと大抵のジャンルが網羅されている。
だが私は、どの店の看板を見ても、店頭に設置されたサンプルや写真を見ても、コレが食べたいという意欲が湧かない。
かといって、ベトナム料理や本格インドカレーが食べたいわけでもない。
空腹感や食欲がないわけでもない。
いや、あるかと言われると微妙なところだが…でも、食べようと思えば食べられることがわかる。
「自分が何を食べたいのかわからない」という状態なのだ。
ちなみに、食欲がないという状態は、マジで「食べられね~~~」って感じ。朝も昼もほぼ何も食べないまま夜8時を迎え、どう考えてもお腹が減っていておかしくない状態なのに、何も喉を通らない。美味しくない。胃腸が受け付けない。フラフラしたりもしない。ただし元気もない。というかんじ。個人的な意見である。
私がぼーっとレストラン街案内図を見て、正直に「わかんない」とつぶやくと、家族が「え?」と返す。私も「え?」という感じだ。
最初はそんな日もあるよな、と思って深く考えていなかった。そもそも食べたいものが毎日あるなんてことはないし。
子供の頃だって、母親に「今夜のおかずは何が良い?」と聞かれて答えられない日もあったし。
しかし、身体的な症状がひどくなるにつれ「何が食べたい?」「どこへ行きたい?」などの質問をされることが、だんだん苦痛になっていった。(この頃、就活が上手くいかず、身内の不幸とコロナによるイベントの中止などが相次いでいた)
「わからない」とそのまま答えるも、相手には「なにそれ?ハッキリしてよ」という顔をされる。
でも、わからないものはわからないのだ。
何が食べたいのか、何が欲しいのか、どこへ行きたいのか、まったく想像ができなくなった。
食べたほうがいいのはわかるんだけど、おいしそうな唐揚げの写真を見ても、うどん屋さんの出汁の匂いを嗅いでも、よくわかんない。そんな状態がずっと続き、家族からいい加減にしてよ、というオーラを感じることもあった。
そして、いざ食べようと思うと、とっつきやすい味の濃いものや麺類を選ぶことが増え、口内炎やニキビがめちゃくちゃできて、胃腸の具合が悪くなるという魔のループに陥った。
その後、自分がうつ状態にあると知り、色々調べた。
するとなんと症状の一例に「何が食べたいか分からなくなる」と、まさに今の私の状態そのものが書かれていた。
「はあ~~~~~~なんだ、そうだったのか~~~~~~~~~~~!」
と、不思議なことに私は安堵した。
主体性を失ったわけではない、いや、主体性は失っているのかもしれないが、脳みそのせいなんだ、と自分を許容することができた。
しかし、何が食べたいかわからない、というのは今でも週の半分以上はあって、肉ばかり、パスタばかり、と偏食がちになってしまっている。
何も食べたくない日もあるし、異様に食欲が旺盛なときもある。
ハンバーガーを週に3回くらい食べた日もあった。
でも、食べたい!やりたい!と思ったらなるべくその欲望を叶えてやるようにしている。
コロナ禍で、叶えられないことも多いけれど、なるべく自分に素直に、楽しく生きることを心掛けている。それは主治医からの助言でもある。
今はまだ難しいけど、自由に外食ができる世の中になったら、焼き鳥屋に行きたい。